2007年08月06日

生ましめんかな

 戦後62年、戦時中の様々な証言が、報じられています。
胸の奥深く刻まれ、注意深くしまいこまれた重い記憶を言葉にするのに、人はどれだけの歳月を必要とするのでしょうか・・・・。


 以前この詩に出会った時、ある衝撃を受けました。
私にとって、大切な詩です。
平和な時代に生まれ、自由を享受して今日までこられた事に感謝しつつ・・・・
ご紹介します。



    生ましめんかな 
       − 原子爆弾秘話 ー
                     栗原 貞子

 こわれたビルディングの地下室の夜であった。
 原子爆弾の負傷者達は
 ローソク一本ない暗い地下室を
 うずめていっぱいだった。
 生ぐさい血の匂い、死臭、汗くさい人いきれ、うめき声
 その中から不思議な声がきこえて来た。
 「赤ん坊が生まれる」と云うのだ。
 この地獄の底のような地下室で今、若い女が
 産気づいているのだ。
 マッチ一本ないくらがりでどうしたらいいのだろう
 人々は自分の痛みを忘れて気づかった。
 と、「私は産婆です、私が生ませましょう」と云ったのは
 さっきまでうめいていた重傷者だ。
 かくてくらがりの地獄の底で新しい生命は生まれた。
 かくてあかつきを待たず産婆は血まみれのまま死んだ。
 生ましめんかな
 生ましめんかな
 己が命捨つとも


posted by ピロコ at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ことばの世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。